非・溺愛宣言～なのに今夜も腕の中～

　一毬が彼と出会ったのは、ＷＥＢで知った婚活パーティだった。

　男性と付き合った経験すらない一毬にとって、勇気を最大限に振り絞って参加したパーティ。

　彼は最初から柔らかな笑顔で、会場内で最も地味だった一毬の話を熱心に聞いてくれた。

　そして連絡先を交換し、二度目に会った時に結婚を前提にした交際を申し込まれたのだ。


『僕、カフェを開くのが夢なんだ。一毬ちゃん、一緒にドーナツの美味しいカフェを出そうよ』


　彼の夢のある甘い話に、恋愛経験値の低い一毬はコロッと騙され、気がつけば“開業資金”という名目の借金を多額に背負っていたのだ。


　「はぁ」という大きなため息が車内を包む。

「お前、お人好しにもほどがあるだろ」

　湊斗の憐れむような視線が痛い。

　一毬だって今となっては、そんな事はわかっている。