非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
菱山は秘書の顔を一瞥すると「ふん」と鼻を鳴らした。
「圭吾は、私が引き取ったことに恩義を感じているようですし、紫にも愛情を持っているようですからね。あの子はいわば、自由に使えるコマですよ」
菱山の丁寧な言葉には似つかわしくない発言に、秘書は身震いする。
菱山は一見穏やかそうな話し方をするが、その内面は自分の利益のためには、身内をも簡単に切って捨てる人物だ。
秘書は額ににじむ汗をぬぐいながら、そっと目線を上げる。
「ところで、紫さんのご様子は?」
菱山は再び「ふん」と鼻を鳴らす。
「さぁ。湊斗くんが尋ねて来る日だけは、機嫌が良いですよ。正直、結婚話もこう拗れるようでは、元も子もない。もとはと言えば、湊斗くんを縛りつけるために言ったまで。新製品が完成したあかつきには、考え直しましょう」
菱山はそこまで言ったところで、軽く手を上げ入り口に目を向ける。
そのまま扉を指さすと、秘書を入り口に向かわせた。
秘書は音を立てないようにそっと扉を開く。
「圭吾は、私が引き取ったことに恩義を感じているようですし、紫にも愛情を持っているようですからね。あの子はいわば、自由に使えるコマですよ」
菱山の丁寧な言葉には似つかわしくない発言に、秘書は身震いする。
菱山は一見穏やかそうな話し方をするが、その内面は自分の利益のためには、身内をも簡単に切って捨てる人物だ。
秘書は額ににじむ汗をぬぐいながら、そっと目線を上げる。
「ところで、紫さんのご様子は?」
菱山は再び「ふん」と鼻を鳴らす。
「さぁ。湊斗くんが尋ねて来る日だけは、機嫌が良いですよ。正直、結婚話もこう拗れるようでは、元も子もない。もとはと言えば、湊斗くんを縛りつけるために言ったまで。新製品が完成したあかつきには、考え直しましょう」
菱山はそこまで言ったところで、軽く手を上げ入り口に目を向ける。
そのまま扉を指さすと、秘書を入り口に向かわせた。
秘書は音を立てないようにそっと扉を開く。