非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 するとさっきから耳をかすめていた水音が、いつの間にか止まっていることに気がつく。

 パタンという扉の閉まる音の後に、スリッパのこすれる音が響き、その足音は一毬のいる部屋の前でぴたりと止まった。

「ひっ……」

 一毬は軽く悲鳴を上げると、慌てて手元の寝具を引っ張り、鼻先まで持ち上げて息をころす。


 ゆっくりとドアノブが下げられたと思った瞬間、部屋に入ってきた人物を見て、一毬は一気に顔を蒸気させると、慌ててまた寝具を引っ張り上げた。

 部屋に入ってきたのは、今まさにシャワーを浴びてきたであろう男性。

 腰に長めのバスタオルを巻き、程よい筋肉質の上半身をあらわにしながら、艶のある濡れた黒髪をタオルで軽くおさえている。


 朝日を浴びて立つ様子は、あまりに神々しく、その姿は……。

「ダビデだ……」
< 2 / 268 >

この作品をシェア

pagetop