非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 お金の話が出て以降、彼の仕事を理由にしたドタキャンが相次ぎ、振込先を伝えられた時点で気がつくべきだったのだ。

 でもあの時の一毬は、初めてできた彼氏の語る夢の虜になって、全く冷静に考えることができなくなっていた。

 まぁその結果が、多額の借金だけを残し恋人は蒸発、仕事も住む部屋さえも失うという最悪の事態に陥ったのだが。


 だからこそ、一緒に眠ることを条件に借金を肩代わりしてくれるという湊斗の提案は、喉から手が出るほどありがたい話だ。


 ――でも……ただ隣で眠るだけって、そんなのあり?


 一毬は隣であははと楽しそうに笑う湊斗を、そっと横目で追った。


 ――こんなに人生順風満帆そうなのに……。湊斗さんは、なんで寝られないんだろう?


 常に自信に満ちた湊斗の姿からは想像もつかない悩みの告白に、一毬はただ首を傾げるばかりだった。
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