非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「一毬ちゃんは気がついてないと思うけど、湊斗って一毬ちゃんに対してだけは、独占欲むき出しになるんだよね。笑っちゃうくらいに」

 あははと笑う倉田の声を聞きながら、一毬は社長室で見た湊斗の顔を思い出す。


 『お前を愛してしまった』

 そう言った時、湊斗の瞳はかすかに揺れていた。

 まるで不安でたまらない気持ちを、無理に押さえ込むかのように。


 ――私、あの時、湊斗さんに何も声をかけられなかった……。


 湊斗が初めて自分の気持ちを言ってくれたのに、紫のことが頭に浮かび、何も言葉を発せられなかったことに今更ながら後悔が襲う。

 なぜ目の前の愛しい人に“自分も同じ気持ちだ”と言えなかったのだろう。

 それだけで、きっと湊斗の心は軽くなったはずだ。


 倉田は一毬の顔つきに気がついたのか、安心させるようにほほ笑みを向ける。

「湊斗は本気で前に進もうとしてる。当然、紫さんのことが気になるのはわかるよ。でもそれは、湊斗が解決する問題なんだよ。だから、一毬ちゃんは湊斗のこと信じてあげてよ。八方ふさがりのあいつが、本気で反乱を起こしたんだから」
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