非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 倉田はおどけるように、ウインクしながらほほ笑みを向ける。

「じゃあね」

 そして一毬の肩をぽんぽんと優しく叩くと、「さぁ、仕事仕事!」と明るくつぶやきながら、エントランスに向かって歩いて行った。

 倉田は本当に、湊斗のことを大切に思っているのだろう。

 そして倉田自身が、湊斗のことを心から信じている。

 だからこそ、あんな言葉が出てくるのだ。


 ――信じる……。


 一毬は今までの人生、いつだって自信がなかった。

 でもその自信のなさは、心から信じられる人に出会えていなかったからかも知れない。

 “湊斗を信じる”という心の柱を一つ持っていれば、もう自分は揺るがないで進めるんじゃないか。


 湊斗は、一毬のことを想っていると伝えてくれた。


 ――同じくらい。ううん、それ以上。私だって湊斗さんを想ってる。


 一毬は立ち上がると、目の前でそびえるTODOのビルを見上げる。

 その最上階。そこに湊斗はいる。

 一毬は堰を切ったように走り出すと、エレベーターに飛び乗った。
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