非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 湊斗は腕で顔を覆うと、崩れるようにその場にしゃがみ込む。

 その姿を見て、一毬の瞳からも次々に涙がこぼ落ちた。


 ――私はやっぱり、この人を支えたい。


 一毬は両手を広げると、愛しくてたまらない湊斗の大きな背中を抱えるように、ぎゅっと力を込めた。

 湊斗はたった一人で、この背中にどれだけのものを背負ってきたのだろう。

 社長という立場で、今まで誰にも弱みを見せられなかったはずだ。


 一毬は湊斗の背中に、何度も何度も優しく触れる。

 湊斗の苦しみを、少しでも軽くできるようにと願いながら。

 しばらくして、湊斗はゆっくりと顔を上げると、一毬の瞳の奥を優しく見つめた。


「一毬、ありがとう……」

 まるで“愛してる”とささやく様に紡がれた言葉。

 一毬は全身でその言葉を受け取る。

「私はずっと、湊斗さんと、同じ気持ちでいます……」


 その日の夜、二人はお互いの手を取り合いながら、眠りについた。

 重ねた手のひらから感じる湊斗の温もりを手繰り寄せるよう、一毬は強く強く、その手を握りしめた。
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