非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 車が大通りに差しかかると、昨日一毬が倒れた広場が見えてくる。

 その奥には、大きなビルがそびえ立っていた。

 今まで気にもしなかったが、地上30階はあろうかという超高層ビルだ。

 入り口には大きく“TODO(トウドウ)メディコム株式会社”と書かれている。


 ――“TODO”って、もしかして藤堂?! 何の会社なの?! 私、ドーナツしか作ったことないけど、本当に大丈夫……?!


 次第に不安を募らせる一毬をよそに、車は軽快に大通りからビルの地下駐車場へと入って行く。

 通りを曲がる際に、昨日まで一毬がドーナツを作っていた小さな店が見えた。

 きっと店長は今日もドーナツを作っているんだろう。

 借金を抱え家賃も払えなくなった一毬を、店長は好意で店の二階に住まわせてくれていた。


 ――結局、迷惑をかけるだけかけて、最後はお礼も言えなかった……。


 一毬は小さくため息をつきながら車を降りると、湊斗と牧の後ろについてエレベーターへと乗り込んだ。
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