非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「紫さんの件が、解決したということですか?!」

 湊斗は目線を上げると、にっこりとほほ笑んだ。

「俺は前に進んでいける。もう自分の想いを押し込めたりしない。みんなのおかげだ。一毬と遼と牧……」

 湊斗はそう言いながら三人の顔をそれぞれ見た後、ゆっくりと入り口を振り返った。

 一毬は「え?」と首を傾げながら、扉の方へ顔を覗かせる。

 すると、再びゆっくりと入り口の扉が開いた。

 そして入って来た人物に、三人は驚いて顔を見合わせる。


「それと……楠木だ」

 湊斗の声とともに、楠木は静かに社長室へ入ると深々と頭を下げた。


 ――楠木さんが、どうしてここへ?


 戸惑う一毬の手を引いて、湊斗はソファへ腰かける。

 そして向かいの席を楠木に勧めた。


 目の前に落ち着いた様子で座る楠木は、もう昨日のような、湊斗を恨む憎々しい顔つきはしていない。

 爽やかで精悍な、いつもの楠木の顔に戻っていた。

「どういうこと?! なんで裏切り者の楠木が、ここにいるんだよ! 湊斗、ちゃんと説明して!」
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