非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
一毬は楠木とともに、総務部へと戻るため静かな廊下を歩いていた。
そっと見上げた楠木の横顔は、晴れ晴れとしている。
湊斗が前に進めたように、きっと楠木もこれから一歩踏み出せる。
――そして、紫さんも……。
湊斗の“眠りの呪い”は解けた。
今更ながら、そのことにじわじわと実感が湧いてくる。
湊斗はあの後、会長と話をするために出て行った。
「今日は一緒に帰るから」
湊斗は部屋を出る直前、一毬の耳元でそうささやいたのだ。
頬をかすめた湊斗の吐息を思い出し、思わず顔を真っ赤にした一毬を、楠木が振り返る。
「前に佐倉さんが、自分は社長の大切な人じゃないって言ってたけど……そんな事、全くなかったね。社長の目には、佐倉さんしか映ってないのが、よくわかったよ」
「そ、そんなことは……」
一毬はさらに顔を赤くすると下を向く。
楠木はぴたりと足を止めると、そんな一毬に深々と頭を下げた。
「佐倉さんには嫌な思いをさせて、本当に申し訳なかったと思ってる。到底許されるものだとは思ってないよ」
「楠木さん……」
「だから僕も、これから懸命に働こうと思う」
そう言って顔を上げた楠木に、一毬はにっこりと笑顔を返した。
そっと見上げた楠木の横顔は、晴れ晴れとしている。
湊斗が前に進めたように、きっと楠木もこれから一歩踏み出せる。
――そして、紫さんも……。
湊斗の“眠りの呪い”は解けた。
今更ながら、そのことにじわじわと実感が湧いてくる。
湊斗はあの後、会長と話をするために出て行った。
「今日は一緒に帰るから」
湊斗は部屋を出る直前、一毬の耳元でそうささやいたのだ。
頬をかすめた湊斗の吐息を思い出し、思わず顔を真っ赤にした一毬を、楠木が振り返る。
「前に佐倉さんが、自分は社長の大切な人じゃないって言ってたけど……そんな事、全くなかったね。社長の目には、佐倉さんしか映ってないのが、よくわかったよ」
「そ、そんなことは……」
一毬はさらに顔を赤くすると下を向く。
楠木はぴたりと足を止めると、そんな一毬に深々と頭を下げた。
「佐倉さんには嫌な思いをさせて、本当に申し訳なかったと思ってる。到底許されるものだとは思ってないよ」
「楠木さん……」
「だから僕も、これから懸命に働こうと思う」
そう言って顔を上げた楠木に、一毬はにっこりと笑顔を返した。