非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 牧はそう言うと楠木に視線を送り、楠木が引き継ぐように口を開いた。

「総務部には全社員の個人情報を、保管しているソフトがあります。そこにはもちろん社長の情報も入っている。社長がマンション前で襲われたと伺ったので、念のため社長の自宅を検索したログを確認してみたんです」

「それで?!」

 倉田が身を乗り出す。

「ウイルス騒動の日、アクセスしていた人物がいました。よほど焦っていたのでしょう。足取りのつかめない共有パソコンではなく、自分のパソコンからアクセスしていたので、IDが残っていました」

 楠木が指さす画面を、みんなが覗き込む。

 脇からそっと覗き込んだ一毬は、その名前を見て思わず「えっ?」と声を上げた。


「……矢島……さん?!」

 あの日、ウイルスを発動させてしまい、顔面蒼白で泣き崩れていた矢島が犯人だった?

 一毬はにわかには信じられず、湊斗の顔を見上げると、湊斗もやはり戸惑った表情をしている。

「あいつの、自作自演だったってこと……?!」

 倉田の困惑した声が響き、静まり返った室内では、それぞれが言葉を失っていた。
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