非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 グラニュー糖が口の中でほどけ、ドーナツの甘さと相まって、我ながら上出来だと思った。

 すると湊斗が横から顔を出し、一毬の手元のドーナツにかぶりつく。

 湊斗はもぐもぐと口を動かしながら、にんまりとほほ笑んだ。


「もう、湊斗さんったら」

 わざと口を尖らせた一毬は、途端にぐいっとソファへと押し倒された。

 そして息をつく間もなく、上から湊斗のキスが落ちてくる。

 グラニュー糖が溶け合うように、湊斗の唇からは何度も熱が伝わって来た。

 その熱を感じながら、一毬はまるで自分が食べられているんじゃないかと思うほど、のぼせ上がってしまう。

 すると一毬の疼く様子を見て、湊斗は嬉しそうにほほ笑んだ。


「ドーナツも、一毬も、甘いな」

 湊斗の浮かせた唇が、魅惑的にそっと動く。

「い、いじわる……」

 一毬はとろけそうになっていた目元をさらにピンクにすると、腕で顔を隠そうとした。

 でもその手はすぐに湊斗に捕らえられ、再び唇を覆われる。

 ドーナツよりも甘い吐息の中、週末の午後は満ち足りた時間を刻んでいった。
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