非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「そんな写真、初めて見たな」

 いつの間にかシャワーを終えていた湊斗が、髪にあてていたタオルをそっと外すと、一毬の隣に足を滑り込ませる。

 そして一毬を後ろから抱きしめると、一緒に写真立てを覗き込んだ。

「お母さまの宝物だそうです。本当に、素敵なご家族ですね」

 一毬は涙を指で拭うと、写真立てを胸に当てながら湊斗を振り返る。

「今日は、ありがとうな」

 湊斗はそう言うと、一毬の顎にそっと触れ、優しくキスをした。

 いつもより静かで、お互いを確かめるような甘いキス。

 次第に深く重なる唇に、一毬は途端に溶けてしまいそうになる。


 するといつの間にか、湊斗に握られていた左手に何かが当たった。

「え?」

 唇を浮かせた一毬は、そっと目線を下げて思わず息を止める。

 一毬の左手の薬指には、柔らかな曲線に包まれるようにキラキラと輝く、ダイヤの指輪がはめられていた。

「湊斗さん……これって」

 もう一毬の声は震えてほとんど聞こえない。


「一毬、結婚しよう。これから先もずっと、お前には俺の隣で眠って欲しいんだ」

 一毬を抱きしめながら、愛しさを紡ぎ出す湊斗の低い声が、身体の芯をじんわりと温めてゆく。

「……はい」

 一毬は瞳を涙でいっぱいにしながら、何度も何度もうなずいた。
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