非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 それからは食事をしたり、船内を巡ったりと時間を過ごし部屋に戻る。

 牧が予約してくれたという特等室は、いわゆるスイートルームで、キングサイズのベッドに専用のシャワー室、ソファ席やアメニティも充実しているホテルのような客室だった。

 そして窓の外には海が一望できる専用のデッキまで用意されている。

 一毬が窓際に駆け寄ると、いつの間にか窓の外には夕焼け空が広がり、オレンジ色の夕日がだんだんと傾きかけていた。

「外に出てみよう」

 湊斗が重い扉をぐっと押し開ける。

 途端に強い風が身体を揺すり、よろめいた一毬は湊斗に抱き止められた。


 湊斗に肩を抱かれたまま、二人で日が沈む様子を見つめる。

 まるで大きなオレンジ色が、徐々に海に溶け込んでいくかのようだ。

 目線の先から変化する空のグラデーションは、二人を360度ぐるりと包み込む。

「素敵……」

 一毬は小さくつぶやくと、湊斗の腰に両手を回し、ぎゅっと抱きついた。

「一毬」

 湊斗が優しく名前を呼ぶ。

 顔を上げた一毬の頬を、湊斗の右手が包み込むように触れた。

「俺は一毬に出会うまで、心穏やかに眠れる日が訪れるなんて思ってもみなかった。だから今こうして、一毬と一緒に美しい景色を眺められる、この一瞬一瞬が奇跡のように愛しくてたまらない」
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