非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「改めて言わせてほしい。俺はこの先もずっと、一毬の隣で眠りたい」

 湊斗のまっすぐな瞳に、一毬は胸が熱くなる。

 一毬は、湊斗の腰に回していた両手にぎゅっと力を入れると、そのまま胸元に顔をうずめた。

 甘い香りが、一毬を優しく包み込む。


 ――大好きな、湊斗さんの香り……。


 船は穏やかに波の合間を進み、日が沈んだ空には一番星が瞬きだした。

 一毬はドキドキと早くなる鼓動を感じながら、そっと湊斗の顔を見上げる。

 秘密を話したら、湊斗はどんな顔をするだろうか。

 一毬はわざと少し困ったような顔をすると、ゆっくりと口を開く。 


「私もずっと、湊斗さんの隣で眠りたいです。でも……」

 口ごもる一毬に、湊斗は「え?」と途端に不安げな色を浮かべる。

「でもそれは、しばらくお預けになるかもしれません」

「どういうことだ……?」

「……だって」

 一毬はそう言うとそっと目線を下げ、自分のお腹を両手で優しく包み込むと、再び顔を上げる。


「だって、私たちの間には、きっとこの子が眠ることになるから……」

 湊斗は目を丸くさせながらはっと息をのむと、信じられない様子で口元に手を当てる。

「一毬……それって、まさか……」

 一毬はかすかに震える湊斗の手を取ると、自分のお腹にそっとあてる。
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