非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「ここにいるんです。湊斗さんと、私の赤ちゃんが……」

 一毬の言葉を聞いた途端、湊斗は勢いよく一毬を抱き上げると、そのまま力いっぱい抱きしめた。

「信じられない……。俺が……父親になるのか……?」

「そうです……お父さんです」

 一毬が湊斗の首元に手を回しながら顔を覗き込むと、湊斗の瞳には今にもあふれ出しそうな程の涙が溜まっている。

 湊斗は抱き上げていた一毬をそっと下ろすと、その足元に片膝をつきしゃがみ込んだ。

 そして一毬の両手を、愛しそうに持ち上げると、ぎゅっと包み込む。

「俺は誓う。一生をかけて、一毬とお腹の子どもを愛しぬくことを……」


 湊斗の愛の言葉を聞きながら、一毬の脳裏には、あの日の湊斗の言葉が懐かしさとともに蘇る。


 『お前を愛する余地は一ミリもない』


 湊斗の“眠りの呪い”から始まった“非溺愛宣言”は、時を経て、今確かな“溺愛宣言”になった。


 ――私たちはこれからも、お互いを支え合って、一歩ずつ前へと進んでいくんだ。


 一毬は瞳を潤ませながら大きくうなずくと、再び湊斗の胸へと飛び込んだ。

 お互いをしっかりと抱きしめ合う二人の頭上では、いつの間にか、数えきれないほどの満天の星空が広がっていた。


「一毬、愛してる」

「湊斗さん、私も愛しています」

 まるで誓いのキスをするように、二人はそっと唇を重ねる。


 キラキラと輝く星々は、二人の愛をいつまでもいつまでも、優しく包み込んでいた。



【完】
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