非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 近くに停まっていたミニバンには、司の祖父らしき白髪の男性が待っていて、湊斗と一毬は挨拶をすると車へと乗り込んだ。

「ようこそ、おいでで。沖村です」

「藤堂と申します。今日はよろしくお願いします」

 湊斗の声にほほ笑むと、沖村さんはしわしわの手でハンドルを握り、豪快にアクセルを踏む。

 車の急発進に一毬はドキドキとしながら湊斗にすがりつき、思わず顔を見合わせた二人はぷっと吹き出した。


 道すがら聞いた話では、診療中で迎えに来られない宮脇医師にかわり、近所に住む沖村さんと司が迎えに来てくれたようだ。

 司は小学校六年生で祖父との二人暮らし。

 来年は隣の人口の多い島の中学校へ、船で通学するという。


「ねぇねぇ。お兄さんすごい機械作ったんでしょ?」

 司は検査機器に興味があるのか、湊斗に前のめりで話しかけている。

 普段、子供と接し慣れていない湊斗は司の質問攻めにタジタジだったが、一毬はそんな様子をほほ笑ましく見つめていた。

 しばらくして到着した診療所は、聞いていた通り多くの人で賑わっていた。
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