非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 満足そうに笑う宮脇の顔を見ながら、一毬はそっと湊斗の手を握る。

『苦しんでいる人のために、自分の力を使いたい』

 湊斗の研究にかける想いは、いろいろな壁を乗り越えて、今こうしてちゃんと必要な人たちの所へと伝わったのだ。

 ぎゅっと握り返された手のひらからは、湊斗の溢れる気持ちが伝わってくるようだった。


「ほら、司! こそこそしてないで入っておいで。藤堂さんの話を聞きたいんだろう?」

 宮脇が身を乗り出し、後ろの扉に向かって大きな声を出す。

 一毬が振り返ると、顔を真っ赤にして走り去る司の姿が見えた。


「司くんは、医療関係に興味があるみたいですね。ここに来る車の中でも、鋭く質問されて驚きました」

 湊斗の話を聞きながら、宮脇は静かにほほ笑む。

「司は勉強が好きなんですよ。実際に成績も良い。でも……」

「でも?」

「あの子は小さい頃に両親を亡くしてまして、この島のおじいさんのところへ引き取られたんです。子供なりにその恩を感じているのか、中学を出たら高校には行かず、島で働くって言って聞かなくて」

 宮脇はそっとうつむくと、小さく首を振った。
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