非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「それはどうして?」

「ここら辺の島には高校がないんですよ。だから高校に行くとなったら、島を出て寮生活になりますから」

「おじいさんを、一人にするのが心配なんですね……」

「そうでしょうな。本当は高校にも大学にも行って、勉強したいと思うんですよね。僕だってあの子の質問には、いつもタジタジですよ」

 頭をかきながら笑う宮脇の瞳には、どことなくやるせなさが見え隠れしている気がした。


 しばらくして、一毬と湊斗は宮脇に挨拶をすると診療所を後にした。

 検査機器の設置と説明は、閉院後に行う予定だ。

 夜にまた戻ってくるため、二人は一旦今日泊まる民宿に向かう。


 診療所からも歩いて移動できる距離の民宿は、海岸沿いのゴツゴツした岩の奥に広がる白い砂浜と、真っ青なコバルトブルーの海が一望できる場所にあった。

 湊斗が部屋の窓を大きく開くと、爽やかな初夏の風が潮の香りとともに吹き込んでくる。


「わぁ」

 思わず窓辺に駆け寄った一毬の顔を、湊斗が覗き込んだ。

「疲れてないか? 身体は平気か?」

「はい。大丈夫です」

 一毬はほほ笑むと、そっと自分のお腹に目線をうつし、ゆっくりと手でさすった。
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