非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

意味深な言葉

 夕方、移動中のエレベーターで楽しそうに肩を揺らす湊斗の顔を、牧がじっとりとした目で覗き込む。

「社長は随分と佐倉さんが、お気に召したみたいですね」

「ん? まぁな」

 湊斗はチラッと牧に目線を向けると、再び思い出し笑いをするかのように体を揺らす。


「あいつ、俺のことなんて呼んだと思う?」

「さあ?」

「ダビデさんだと」

「は? ダビデ? ダビデ像のダビデですか?」

「そう。どんだけ天然なんだよ」

 あははという湊斗の笑い声が、狭い室内に響く。


 すると眉をひそめてダビデ像を思い浮かべていたらしき牧が、急にはっと顔を上げた。

「社長……まさか、もう手をだし……」

 そこまで言った所で、湊斗は牧の顔を鋭く睨みつける。

「あのな! 車の中での会話、聞いてただろ」

 牧は首をすくめ前を向くと、少しだけ安心した顔を見せた。
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