非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 正面玄関にはすでに車が横づけされ、湊斗を会合場所へと連れていくために運転手が控えている。

 湊斗の姿を見つけると、運転手はすぐに後部座席のドアを開いた。


「では、私は佐倉さんをマンションに送り届けて、今日は直帰しますので」

 牧が湊斗に鞄を渡しながら声をかける。

「あぁ、よろしく頼む」

 湊斗は車に乗り込もうとして、ふとエントランスを抜けてきた人物に目を止めた。


 ――あれは確か、今朝総務部にいた楠木とかいう社員……。


 湊斗がしばらく見つめていると、その様子に気がついたのか、楠木が相変わらず爽やかな笑顔で会釈をしながら近づいて来る。


「社長。お疲れ様です」

 今朝初めて顔を合わせたのに、社長である湊斗にも全く物怖じしない様子だ。

 湊斗は何となくその姿をじっと目で追っていた。


「佐倉さんは?」

 すると牧が先に横から口を出した。
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