非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「でも、せっかくだから……」

 一毬はスーパーに入ると、必要な食材を買い込みエレベーターへと乗り込んだ。


 部屋へ入ると、一毬は一番にキッチンへと向かう。

 湊斗の部屋の冷蔵庫は、予想通りほぼ何もなく空っぽだった。

「手料理を作ってくれる女性は、いないってことか……」

 どこかでホッとしている自分に気がつき、一毬は慌てて首を振る。

 いやいや、自分が愛される余地は一ミリもないのだ。


「私ってば、昨日の今日で何考えちゃってるんだろ……。身分違いも甚だしい……」

 一毬はパンパンと自分の頬を叩くと、腕まくりをして早速準備に取りかかった。


「私の取柄はこれしかないもんね!」

 一毬は慣れた手つきで材料を準備すると、黙々とドーナツ作りを始める。

 きっと湊斗は、普段は外で食事をすませ、マンションには寝るためだけに帰るのだろう。

 このシンプルすぎる室内を見てもそう思う。
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