非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「ご、ごめんなさい。驚いちゃって……」

 一毬が顔を真っ赤にして頭を下げると、湊斗はぷっと吹き出して楽しそうに笑い出した。

「研究室に用事か?」

 湊斗が一毬の手元を覗き込む。

「あ、はい。楠木さんに言われて、書類を持って行きながら、各部署に挨拶回りです。大切なのはコミュニケーションなんだよって、教えてくださって」

 一毬の声に、湊斗は「ふーん」と目を細める。


「お前の事、ちゃんと育てようとしてくれてるみたいだな」

「……そうなんですか?」

「あぁ」

 一毬は不思議そうに首を傾げてから、湊斗を見上げる。


「でもそうだとしたら、それは湊斗さんのおかげです。社長の知り合いだからって、皆さん親切にしてくださるんだと思います」

 一毬が首をすくめると、湊斗は一毬の肩に手を置き、優しい顔でほほ笑む。

「いや、それは違うよ。俺の影響は最初の一瞬だけ。一毬のまっすぐ仕事に取り組もうって姿勢が、ちゃんと伝わったんだよ」
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