非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「まったく……今まで誰と一緒にいたのよ」

 一毬はチクリと心に棘が刺さったような気持ちになったまま、湊斗のネクタイをそっと外した。

 湊斗がお酒を飲んで帰ってくる日は、いつも倒れ込むようにベッドに入る。

 どこで何をしているのか、誰と会っているのか、一毬には一切わからなかった。


 そして湊斗は、最初の宣言通り一毬とは隣で眠るだけで、色っぽい事は何も起きていない。

 一毬だって、最初から自分はおもちゃのように、遊ばれているだけだとわかってはいる。

 それでも時々垣間見える湊斗の素の部分が、自分だけへの愛情表現なのではないかと勘違いしてしまいそうになるのだ。


「湊斗さん。ちゃんとお布団の中で寝てください」

 一毬が耳元でささやくと、湊斗は「うーん」と声を出しながら素直に起き上がり、目を閉じたままスーツを脱ぐ。

 そして一毬がめくった寝具に潜り込むように、再び身体を沈めた。
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