非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 ――そうか。だから湊斗さんは朝早かったのかな?


 昨夜、あんなに酔って帰って来ていたのに、一毬が目を覚ました時には、すでに湊斗の姿は部屋になかった。

 この視察のために早く出たのだろう。


 それにしても昨夜の湊斗は、そんな大事な視察が入っているとは微塵も感じさせなかった。


 ――香水の匂いがぷんぷんしてたし。


 一毬はすねた心持で昨夜の湊斗の様子を思い出しながらも、ふと首を傾げる。


 ――そういえば、いつも湊斗さんって、私よりも早く起きてるんだよね。


 一毬が毎日、爆睡してしまうせいなのか、目覚めた時に目の前に湊斗の顔があったことは今まで一度もなかった。

 すでに出社していることもあれば、リビングで新聞を読んでいることもあるが、いつも一毬の方が遅かった。

 それが湊斗の“眠れない”につながるのだろうか?

 一毬がぼんやりとデスクの書類に手をかけた時、吉田がおもむろに顔を寄せる。
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