非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「おい、湊斗! 自分で歩けよ!」

 すると突然、知らない男性の顔が目の前に現れ、一毬は「ぎゃっ」と声を上げると慌てて扉の隙間に身を隠した。

 しばらくしてそっと顔を覗かせると、同じく驚いた顔の男性と目が合う。

 湊斗と同い年くらいの背の高い男性は、鼻すじの通った綺麗な顔の目をまん丸に見開いている。


「なんだ、本当にいたのか……」

 そう小さくつぶやいた男性の脇から、今日も頬をピンクに染めた湊斗の顔が見えた。


「湊斗さん」

 一毬が駆け寄り抱きかかえると、湊斗はいつものように一毬の肩に手を回した。

 今日の湊斗からは、ほのかなアルコールの香りだけが流れてくる。

 男性が誰かはわからないが、とりあえず湊斗をベッドに連れて行くのが先だろう。


「すみません。リビングでお待ち下さい」

 一毬は男性に声をかけると、湊斗を連れて寝室へと向かう。


「一毬、ただいま……」

 湊斗は甘える声を出しながら、ベッドに倒れ込むとすぐにそのままシーツにうずくまった。
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