非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

研究者としての顔

「佐倉さん。悪いんだけど、この荷物を急ぎで研究室まで届けてもらえる?」

 文房具の発注画面に見入っていた一毬は、吉田の声に慌てて顔を上げた。

 見ると吉田が小さな段ボール箱を抱えながら、入り口で手を振っている。

「は、はい!」

 一毬は勢いよく立ち上がると、小走りで吉田の元に近寄った。


「急ぎの荷物らしくてね。ごめんね」

 そう言いながら吉田に手渡された荷物の宛名は“研究室長 倉田遼様”となっている。


 ――昨日の人、本当に室長だったんだ。


 まじまじと宛名を覗き込む一毬に、吉田がそっと顔を近づけた。


「室長って、なかなかのイケメンだから。まぁ、私は湊斗社長の方がタイプだけどね」

 吉田はくすりと肩をすくませると、「じゃあ、よろしく」とデスクに戻っていく。

 一毬は荷物を抱えると、昨夜見た倉田の顔を思い出しながら、研究室へと向かった。
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