非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
「俺、ねじってある昔ながらのドーナツが好きなんだよな。もう随分と、食べてないけど」

 湊斗が懐かしそうな顔を浮かべながら言った。

 湊斗の好みは、以外にもスタンダードなドーナツなのか。

 一毬は嬉しくなって、笑顔で振り返った。

「私もそのドーナツ大好きです! じゃあ、それ作りましょうか」

 一毬が身を乗り出して言うと、湊斗はまるで子供のような笑顔を返す。

 その笑顔に思わずドキッとして、一毬は慌てて目を伏せるとまた手を動かしだした。


 生地を小分けにして、クッキングシートの上に成形していく。

「俺もやっていい?」

「もちろん」

 興味津々で覗く湊斗と一緒に、二人で黙々とドーナツ作りを進めた。


 湊斗はやはり手先が器用なようで、初めてなのにとても手際がいい。

「ここをもっとねじるといいですよ」

 肩を並べてキッチンに立ち、指先が触れるか触れないかの距離感に妙にドキドキする。


 ――普段、隣で寝てるんじゃない。私ってば、何をそんなに意識しちゃってるんだろう……。
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