非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

突然の提案

 ――あぁ、そうか。昨日倒れた時、耳元で聞こえた声は、この人の声だったんだ。


 一毬は上目づかいで、今は窓辺に立っている男性にそっと目をやる。

 それにしても、なんて綺麗な顔をしているんだろう。

 『社長』と呼ばれていたからには、きっとどこぞの会社のお偉いさんなのだろう。

 一毬が生きてきた世界では関わることもない人の、その整った顔立ちをぽーっと眺めながら、一際目を引く魅惑的な瞳に吸い込まれそうになる。


 ――でも、少しだけ寂しそう……?


 影のある雰囲気が、また男性を色っぽくみせていた。

 すると男性が振り返り、寝具を握り締めたままの一毬の隣に静かに腰を下ろす。


「悪い話じゃないだろう? お前の借金を肩代わりしてやるって、言ってるんだ」

「そ、それは……」

 一毬は口ごもりながら下を向く。


 男性は、借金を返済してくれる交換条件として、一毬に『今夜から俺の隣で、一緒に眠るように』と提案したのだ。
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