非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 一毬はドキドキする気持ちを隠すように、水道を勢いよく流すと、手際よくボールに泡をつけた。

 ジャーっという水音に混じって、湊斗がかすかに口を開く。

「もうお前も、その一人になってるんだけどな」

「え?」

 一毬が水道を止めて見上げると、湊斗はにんまりとほほ笑むだけだった。


「お前は“ダビデ”に出会えたんだから、儲けもんだろ?」

「ダ、ダビデって……。恥ずかしいからやめてください……」

「そうか? 俺は気に入ってるけど?」

「もう!」


 飄々(ひょうひょう)とする湊斗を横目に、一毬はフライパンに油をたっぷりと入れるとスイッチを押す。

 次第に手元のフライパンは、パチパチと軽快な音を立てだした。

 一毬は火加減を確認すると慎重に、一つずつクッキングシートにのせたドーナツを油に落としていく。

 シュウシュウと細かい泡が立ち、甘い香りをたてながら、徐々にドーナツに色がついていった。


「そういえば、湊斗さんが元々は研究者だったって聞きました。それと、研究に対する想いも……」
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