非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 アスファルトから照り返す日差しに目を細めながらも、頭の中では週末に見た湊斗の顔がチラついていた。

 あの日、湊斗が言いかけた言葉を一毬が再び聞くことはなく、何事もなかったかのように一日が過ぎていった。

 今となっては、湊斗が何を言おうとしていたのかわからない。

 もしかしたら一毬の言葉に対して何も言わなかった、それが湊斗の答えなのかもしれない。


 それでも自分の気持ちに気がついた一毬は、一瞬だけ見せた湊斗の思いつめるような表情に、何か意味があるのではないかと思いたくなる。

 でも最後は、やはり自分には“愛される余地はない”という結論に達してしまうのだ。


「もしかして元気ない?」

 小さくため息をついた一毬の顔を、楠木が心配そうにのぞき込んだ。

「い、いえ。すみません。ちょっと暑くて……」

 一毬は大袈裟に顔の前で手をパタパタとさせると、あははと笑って見せた。

 ランチに入ったイタリアンは、やはり人気店らしく多くの人で賑わっている。
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