非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 一毬は楠木を心配させないように、いつもより明るい声を出しながら、トマトソースのパスタを口にほおばった。


 ランチも終わり会社へ戻る道すがら、楠木は一毬の様子を伺うように顔を向ける。

「前から気になってたんだけどさ」

「はい……?」

「もしかして、佐倉さんって社長と一緒に暮らしてる?」

 楠木の言葉に、一毬はぎょっと目を見開くとぴたりと足を止める。

 一毬が湊斗のマンションで同居していることは、決して誰にも知られないようにしていた。

 朝だって一緒に出勤したことはない。


「い、いえ。住んで……ません……」

 楠木がなぜそんな風に思ったのか疑問に思いながら、一毬はたどたどしく声を出す。

 その様子に、楠木はぷっと吹き出すと肩を震わせて笑い出した。

「佐倉さんって、嘘がヘタだね。大丈夫、誰にも言わないよ。それに、他のみんなは、気がついてないから安心して」

 楠木は相変わらず笑いながらそう言うと、優しいほほ笑みで小さくウインクした。
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