非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
 別に喧嘩をしたいわけじゃない。

 ただ受け入れて欲しかっただけなのだ。

 そう思いながらも、ひねくれた態度をとってしまった自分に嫌気がさした。


 目の前では青色の信号が点滅をはじめ、横断歩道を渡る直前で足止めされてしまう。

 一毬は仕方なく手前で立ち止まると、横目で恨めしく湊斗の手元の花束を見つめた。


 ――今日もデートってことか……。


 一毬はチクチクと痛む胸をぎゅっと押さえる。

 一度にいろんなことが起きて、心がパニックだ。

 もういっそのこと、楠木の気持ちに答えてみれば、この心も楽になるんだろうか。


「おやおや、痴話げんか?」

 その時、後ろから楽しそうな声が聞こえたかと思ったら、倉田がひょいっと顔を覗かせた。

 あまりに場違いな笑顔に、一毬は一瞬あっけにとられてしまう。

「なんだよ。遼か」

 湊斗はというと、倉田の顔を見た途端、舌打ちでも打ちそうなふてくされた顔を見せた。
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