スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
瀧澤は現在密かに国内最大手ホテルチェーンであるサンライズホテルグループに取引を持ち掛けているそうだ。上海で建築が進められている四十階建ての新ホテルのインテリアをすべてTAKIZAWAが請け負うという壮大なプランだ。
「それとテニスがどう結びつくのでしょうか?」
「会長夫妻は大のテニス好きなんだ」
瀧澤は嘆息した。
……要約すると、こういう話だった。
サンライズホテルグループの会長夫妻は大のテニス好きとして有名で、プロテニスプレイヤーのスポンサーに社名を連ねるほど。
そして、自分達もミックスダブルスで都の大会で優勝するほどの腕前らしい。
なんとかアポイントを取り付けたものの、テニスに誘われ困っていたと。
つまり、接待ゴルフならぬ接待テニスということだ。
「人事部長にテニスの上手な女性社員がいないか尋ねたところ、君の名前があがった」
「私ですか……?」
確かに履歴書の賞罰欄や特技欄にはテニスのことを書いたし、入社面接でもその辺りをアピールした記憶はある。
だとしても、仕事上あまり接点のない光莉にこんな大口の接待など務まるだろうか。他に最適な候補者はいくらでもいそうだけれど。
「現状で君以上の適任者はいない。私とダブルスを組んでくれ。もちろん、ただでとは言わない。報酬はキチンと払うつもりだ」
「え!?お給料上げてもらえるんですか!?」
大役が務まるかという懸念は報酬という単語であっという間に消し飛んだ。
しかし、給与を上げろという欲深い要求にはさすがの瀧澤も難色を示した。