スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
作った家具を見せてもらえるということで、光莉は瀧澤の住むタワーマンションに連れてきてもらった。
ミニバンを地下駐車場に停車させ、自分のアパートとは雲泥の差の綺麗なエントランスを抜ける。
二十階にある3LDKが瀧澤の住まいだった。
「お邪魔しまーす」
「こっちだ」
瀧澤は玄関を入ってすぐ脇にあるサービスルームの扉を開けた。
「うわっ!すごっ!」
五畳ほどのサービスルームの中には瀧澤が作ったと思しき家具がずらりと並べられていた。椅子、テーブル、本棚、踏み台と種類も様々だ。
家具の他にもさまざまな木工製品が並べられていた。
「あ、これが瀧澤専務お手製の椅子ですね。座ってもいいでしょうか?」
「ああ」
ひとつひとつのパーツの仕上がりが丁寧で、ガタつきもない。背もたれの優しいカーブは作った人の人柄を表しているようだ。
「座り心地いいですね!売り物になりそう!」
「売れないだろ。こんな素人の手慰みのような代物。だからここに置いてあるんだ」
手放しで褒めちぎると呆れた声が返ってくる。
どうやらお世辞と思われたらしい。
「えー。瀧澤専務お手製の家具だって言ったら、社内の女性はこぞって買うと思いますよ」
光莉はふふふと笑いながら、手近にあった可愛いらしいひよこの置物を手に取った。
どれもよくできている。光莉もひとつ欲しいくらいだ。
「ところで、君はいつまで私を専務と呼ぶつもりなんだ?」
「いつまでって……」
「比呂人さんのことはすぐに下の名前で呼んだじゃないか」
「それは瀧澤専務につられて……?」
「二人きりの時は久志でいい」
光莉は目を瞬かせた。
久志と呼べと言われたのはベッドの中の出来事であって、家族でも恋人でもない光莉が瀧澤を名前で呼ぶのはおかしい気がする。