スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「どうですか?」
「うん。いいな。これにしよう」
ドレスが決まりなぜか瀧澤の方が楽しそうだった。
試着を終えた光莉はドレスを脱ぎ、何気なくタグの値札を見てぎょっとした。
(さんじゅうはちまんえん!?)
想定よりも一桁多い金額に意識が遠のいていく。しかし、うっかり気を失っている暇はない。
「瀧澤専務、ちょっと待ってください!」
ドレスを購入される前になんとしてでも瀧澤を止めなければ。
と、思ったが時すでに遅し。
「異論は認めない」
試着室から出た時には、瀧澤のクレジットカードが切られた後だった。
「ああああーー!」
光莉はその場にヘナヘナと崩れ落ちた。会計は瀧澤持ちだと聞いていたけれど、こんなに高い物を買ってもらっていいの?
ドレスだけでなく、靴からアクセサリーまですべてコーディネートされてしまった。
「す、すみません!」
「君は気にせず着ればいい」
瀧澤はさらりと懐の深さを見せつけ、光莉の卑屈さを吹き飛ばした。
「当日は車で迎えに行く。ヘアメイクは頼んでおくから着替えだけ済ませておくように」
「わかりました……」
瀧澤と別れアパートに帰ると、購入したドレスをすぐにハンガーにかけた。ありきたりなワードローブの中で、買ってもらったレモンイエローのドレスの周りだけが別世界のように煌めいていた。