スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「どうですか?」
「うん。いいな。これにしよう」

 ドレスが決まりなぜか瀧澤の方が楽しそうだった。
 試着を終えた光莉はドレスを脱ぎ、何気なくタグの値札を見てぎょっとした。

(さんじゅうはちまんえん!?)

 想定よりも一桁多い金額に意識が遠のいていく。しかし、うっかり気を失っている暇はない。

「瀧澤専務、ちょっと待ってください!」

 ドレスを購入される前になんとしてでも瀧澤を止めなければ。
 と、思ったが時すでに遅し。
 
「異論は認めない」

 試着室から出た時には、瀧澤のクレジットカードが切られた後だった。
 
「ああああーー!」

 光莉はその場にヘナヘナと崩れ落ちた。会計は瀧澤持ちだと聞いていたけれど、こんなに高い物を買ってもらっていいの?
 ドレスだけでなく、靴からアクセサリーまですべてコーディネートされてしまった。
 
「す、すみません!」
「君は気にせず着ればいい」

 瀧澤はさらりと懐の深さを見せつけ、光莉の卑屈さを吹き飛ばした。
 
「当日は車で迎えに行く。ヘアメイクは頼んでおくから着替えだけ済ませておくように」
「わかりました……」

 瀧澤と別れアパートに帰ると、購入したドレスをすぐにハンガーにかけた。ありきたりなワードローブの中で、買ってもらったレモンイエローのドレスの周りだけが別世界のように煌めいていた。


< 106 / 198 >

この作品をシェア

pagetop