スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

 ヘアメイクが終わると安西夫妻のお祝いの席に向かう。結婚三十年記念のパーティーが行われるのは、都内にあるサンライズホテルのバンケットルームだ。

 国内に数多あるサンライズホテルの中でも、随一のエグゼクティブホテルだ。
 ポーチに横付けされた車から降りた二人は、ホテルの中へと足を踏み入れた。
 慣れないヒールということもありふかふかの絨毯に足を取られそうになっていると、瀧澤の腕が腰に回されグイっと引き寄せられる。

「今日は私から離れるな」

 うっとりするような美声に腰が砕けて、つい寄りかかりそうになる。誰もが振り返る極上の男性にエスコートされるなんて、今日が人生最後の日となっても悔いはない。

 バンケットルームは安西夫婦を祝おうとする招待客でごった返していた。
 なにはともあれ、まずは主役の安西夫婦に挨拶に赴く。

「おおっ!瀧澤くん、出水さん!来てくれたんだね」

 安西夫婦は瀧澤と光莉の姿を見るなり、歓談を中断して駆け寄ってきてくれた。

「本日はお招きありがとうございます。ご結婚三十周年、おめでとうございます。私からはお二人が結婚した年に作られたワインをお贈りさせて頂きましたので、ご賞味ください」
「ありがとう、瀧澤くん」
「おめでとうございます!お二人のような素敵な夫婦のお祝いの席にご招待頂いてとっても嬉しいです!」
「ありがとう、出水さん。今日は楽しんでいってね」

 安西夫婦は照れ臭そうに微笑むと、再び招待客の輪に戻っていった。
 腕を組み、会場を渡り歩く様はおしどり夫婦そのもの。ダブルスも息がぴったり合っていたし、本当に仲が良いのだろう。

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