スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

(羨ましいな……)

 生涯の伴侶どころか、彼氏すらいない光莉には三十年も同じ時を歩んできた安西夫婦が眩しく映った。

「何か飲むか?」
「助かります。緊張で喉がカラカラで……」
「シャンパンを」

 瀧澤はウェイターからシャンパンを受け取り、光莉に渡した。
 呑気にシャンパンを飲んでいると、ふと自分が多くの人から見られていることに気がつく。
 いや、見られているのは光莉ではない。……瀧澤だ。

(当然か……。こんなに素敵な人は他にいないもの……)

 ともすればすぐに挙動不審に陥りそうな光莉とは対照的に、瀧澤は実に堂々としていた。
 シンプルなブラックフォーマルだからこそ瀧澤生来のスタイルの良さが際立ち、他の男性とは一線を画す雰囲気を放っていた。
 やはり注目の的なのか、光莉は特に女性達から突き刺さるような視線をもらう。

(場違いすぎて、つら……)

 光莉は急に瀧澤の隣に立っていることが恥ずかしくなってきた。
 着飾ってウキウキしていた気分が萎んでいく。パーティーに来ている女性達はみな、顔が小さく、身体もほっそりとしていて美しかった。服ばかり立派でも中身が伴わないと意味がないのだと思い知らされるようだ。

「どうかしたか?」
「私なんかに着られているドレスが可哀そうで……。全然、似合ってないのに」

 自嘲気味に笑っていると、ふいに顔に影が差し込む。
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