スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「誰が何と言おうと君は綺麗だ」
瀧澤は身体をかがめ、光莉の顔を真正面から見据えた。
そして、誰にも聞かれぬよう光莉の耳元で甘く囁いた。
「全身あますところなく眺めた私が言うんだ。間違いないだろう?」
……うっかりグラスを床に落とすところだった。
パッと一歩後ろに下がった光莉は上目遣いで瀧澤を見上げた。
「どうかしたか?」
素知らぬ顔で微笑まれ、かあっと身体が熱くなる。全身から湯気が立ち上りそうだった。決して一気飲みしたシャンパンのせいではない。
瀧澤があの夜のことをあえて口にするなんて思ってもいなかった。
「メイクを直しに行ってきます……!」
光莉は脱兎のごとくその場から逃げ出し、トイレに駆け込んだ。
鏡の前で手をついている自分はみっともないほどに狼狽えていた。
あの夜のことは意識から追い出そうとしていたのに、また思い出してしまう。スイートルームで身体に悦を刻まれ、蕩けるほどの夜を過ごした。
(ああもう!瀧澤専務のえっち!)
光莉は怒りをぶつけるように心の中で瀧澤を思い切り罵倒した。