スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「ちなみに、瀧澤専務はテニスのご経験はありますか?」
「……ない」
「体育の授業などで触ったことは……」
「……まったくない」
「まったく……ですか?」
光莉は目を瞬かせた。……雲行きが怪しくなってきた。
「私はテニスについてズブの素人だ」
瀧澤は淡々と白状した。あまりに堂々とした態度だったので、一瞬嘘なのではないかと疑ってしまった。
「接待の日はいつなんですか?」
「二か月後だ」
「二か月後!?」
つまり、二か月という短期間でテニス初心者の瀧澤をどうにかしてダブルスが出来るように磨き上げなければならないということだ。
(もしかして……早まった……?)
頭で考えるよりも先に身体が動くこの性格が、ここにきて最大のポカをやらかすことになるとは……。
しかし、引き受けてしまった以上はやるしかない。
(後悔している暇はない!)
光莉は自分に活を入れ、キッと顔を上げた。
「瀧澤専務!頑張りましょう!」
「……ああ。よろしく出水さん」
二人は互いの利益のために、固い握手を交わしたのだった。