スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「ドアを開けるのが遅すぎる。さっさと開けて」
露希は宣言通り、九時過ぎに久志のマンションにやってきた。
玄関で仁王立ちする露希に比べれば、本物の仁王像の方がまだ可愛いげがある。
露希は長い手足を器用に折り畳み、廊下に立ち塞がる瀧澤の脇を素早くすり抜け、サービスルーム、リビングの戸棚、寝室のクローゼットと次々と家宅捜索を始めた。
「勝手に漁るな!」
「私の服を勝手に捨てた兄さんに止める権利はないから!」
綺麗なブーメランが返ってきて、久志はぐうの音も言えなくなった。
それに露希は久志が怒鳴ったぐらいで、自分を曲げる人間ではない。
露希の執念が実ったのか、久志の脇が甘かったのか、とうとう空っぽの紙袋が見つかってしまった。
「やっぱり!」
紙袋の中に入れっぱなしになっていた、包装フィルムとタグを見つけて、露希は鬼の首を取ったように勝ち誇った。
「タグが切ってある!捨てるのにわざわざタグを切るなんておかしいじゃない!一体誰に着せたの?」
「話す必要はない」
「私の服を勝手に着せた女に会わせてくれなきゃ、ここから一生動かないから!」
仁王の次は大仏にでもなるつもりか。面倒なことになってしまった。こうなった露希はテコでも動かない。
居直る露希に困り果てた久志は観念して、光莉に連絡をとったのだった。