スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
レッスン6.鬼コーチの熱血指導
「光莉、準備は出来てる?」
「はい、露希さん!準備万端です!」
光莉は露希とヨヨヨ侍のコラボカフェにやって来ていた。整理券を取り、順番を待つこと三十分。ようやく入店を果たした二人はテーブル席に案内された。
(うわあ!可愛い!)
着席しメニューを開けばヨヨヨ侍のキャラクター達が、光莉と露希を歓迎するように手を振っている。
「この、『ぎゅぎゅっとヨヨヨ侍パフェ』と『開運でござる、ヨヨヨソーダ』をひとつ」
露希は注文を取りに来た店員に朗々とメニュー名を読み上げた。珍妙な単語の羅列にも関わらず、愉快に聞こえないのは露希の声が涼やかで凛としているからだ。
変装らしい変装もしていない素顔の露希は大いに目立っていた。
長い脚を組み、背もたれに身体を預ける露希は瀧澤そっくりだった。不思議なことに、柔らかい雰囲気を纏った男性にも、凛々しい女性のようにも見える。
露希の芸名、『星川恵流』で安易にネットで検索したら、とんでもない情報量で目を回した。
黄金塚歌劇団では男性を演じる団員をナイト役と呼ぶそうだが、露希は四つの組にそれぞれひとりしかいないトップスターとして長らく活躍していたらしい。
他に類を見ないカリスマ性で黄金塚歌劇団のナンバーワンの看板を背負っていた、そんな人が今は……。
「ちょっと光莉、早く撮ってよ!」
「少々お待ちください!」
光莉とヨヨヨ侍カフェで写真を撮りあっているとは不思議なものだ。