スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「わかりました。それでは一緒に買いに行きましょう。お時間を取って頂けますか?」
「今夜なら空いている」
「わかりました。それでは今日買いに行きましょう」
後日、日を改めてということにすると、いつまで経っても練習が始められない。この場で待ち合わせの時間と場所をささっと決めてしまう。
会社から一番近い大型スポーツ用品店の前で七時に集合しようと提案すると、瀧澤は「わかった」と頷いた。
「それではまたあとで」
「はい」
大体の話が終わると光莉は専務の執務室から法人営業部へと戻った。
ふうっと息を吐きながらオフィスチェアに腰掛けると、すぐに柳瀬が駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫だった!?」
心配そうに声を掛けられ、自分がどういう状況で瀧澤の元へ向かったのかようやく思い出す。
(……あ。すっかり忘れていた。)
今を時めく瀧澤から謎の呼び出しを受けた光莉について、法人営業部では様々な憶測が飛び交っていたことだろう。
柳瀬の後ろをちらっと見ると、法人営業部の面々が聞き耳を立てているのが分かった。
光莉の直属の先輩である柳瀬は生きた心地がしなかっただろう。
(どうしよう……)
瀧澤から接待テニスの件は他言無用だと口止めされている。サンライズホテルグループと取引しようとしていることがどこかにもれたら一大事だ。
何と答えていいものかと考えあぐねていると、突然妙案を思いついた。