スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「私はただ、あんな状態の人を放っておけないだけで……」
「とんだお人好しだな」
「お人好しでも構いません」
顔の痣はここ最近できたものだった。いずれは警察の介入が必要な事態に発展することは想像に難くない。今ならまだ斗真を救うことができるかもしれない。
互いに主張を譲らずしばらく真顔で見つめ合っていると、瀧澤が先に折れた。
瀧澤は光莉の希望通り、コーヒーショップに戻ってくれた。
窓に寄りかかり項垂れている斗真に、ジャケットの内ポケットから取り出した名刺を差し出す。
「私の友人で弁護士をしている。ここに連絡しなさい。離婚の相談に乗ってもらえるはずだ。その代わり、彼女には今後一切連絡するな。連絡したらストーカーとして警察に突き出す」
瀧澤の軽蔑するような視線を感じながら、満身創痍の斗真は静かに頷いた。
再びコーヒーショップを出た光莉は、先を歩く瀧澤の背中に、心の中でいくつもの疑問を投げかけた。
(どうして来てくれたの?斗真の呼び出しに応じたこと怒ってる?いつから話を聞いていたの?)
ぽつぽつと浮かんだ疑問はひとつも聞かないうちに喉の奥に押し込んでしまう。
「あの……ありがとうございました」
「別に……お礼を言われるようなことはしていない」
「お礼ぐらい言わせてください」
きっと光莉では斗真と一緒に右往左往するだけで、具体的な解決案を提示することはできなかった。