スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「『元気な挨拶だ』と褒められました!」

 目的は別にあるわけだが、決して嘘は言っていない。挨拶を褒められたのは事実だ。
 光莉はこれ以上の質問は受け付けないと言わんばかりの笑顔のバリアを作り上げ、柳瀬をやり過ごしにかかった。
 
「え!?あ?そう、なの……?」
「はい!ご心配なく!」
「そう……?それならいいけど……」

 ハキハキと答える光莉に悲壮感はなく、本当に何事もなかったかのようだった。心配するなと断言された柳瀬は、それ以上追及することなく、首を傾げながら自席に戻っていった。

(ふう……。なんとか誤魔化せた……)

 瀧澤に口止めされずとも、誰かに言う気は毛頭なかった。瀧澤に手取り足取りテニスを教えることになったなんて話したら、TAKIZAWAの全女性社員の顰蹙を買うこと間違いなしだからだ。

「さ、仕事しよ!」

 万が一でも瀧澤との約束に遅れるわけにはいかない。光莉は粛々と仕事に取り掛かったのだった。


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