スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「……まずいな。追加分の在庫をすぐに確認しよう」
「はい!」

 光莉は休み時間を返上して、在庫を確認を行なった。その表情が次第に険しくなっていく。

(どうしよう……。テーブルセットが足りない……)

 チェストはなんとか確保することができたが、テーブルセットが足りない。

 ダブルルームで使用する『ミドルシリーズ』のテーブルセットは手頃な値段とシンプルな見た目から人気が高い。発注も多く、工場から出荷されると営業所同士で奪い合いが始まるくらいだ。


 プロジェクトチームの権限で各営業所から在庫を融通してもらい、なんとか数量を確保できたのにフロアが増えたことで振り出しに戻ってしまった。

 光莉は日本各地の営業所に連絡したが、テーブルセットだけは在庫を確保することができなかった。

 途中経過を報告するといつもは飄々としている遊佐ですら厳しい表情になった。

「瀧澤さんに報告しに行くしかないな」
「で、でも!まだ返信が来ていない営業所もありますし!」
「……悪い知らせは早ければ早い方が良い」

 遊佐の判断は素早かった。光莉は遊佐とともに瀧澤に状況を説明しに行った。

「ないものは仕方がない。別の手を使う」
「別の手って……。何か考えがあるんですか?押さえている船便は五日後に出発する予定ですよ?」

 上海までの輸送には船便を予定している。出発はずらすことができない。今はとにかく時間がなかった。
 
「出水さんと遊佐にも責任を持って手伝ってもらおう」
「手伝うと言いますと……?」
「遊佐、すぐに人手を集めてくれ。なるべく手先の器用な者が望ましい」
< 161 / 198 >

この作品をシェア

pagetop