スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
定時である十八時に退勤し、待ち合わせ場所であるスポーツ用品店の入口の前で待っていると、時間通りに瀧澤が姿を現した。
「待たせてすまない」
「あ、いえ。私が時間より前に来ただけなので……」
仕立てのいいスーツを着こなす瀧澤がこの場にいると違和感が半端ない。光莉も女性では大柄の百七十センチだが、瀧澤はそれ以上で、頭ひとつ大きい。顔だけでなくスタイルも抜群の瀧澤が、庶民的なスポーツ用品店で買い物をするところがまだ想像できない。
「まずはラケットからですね」
光莉は瀧澤の一歩前を歩き、ラケット売り場へ案内した。
仕事帰りに立ち寄ることもあるので、スポーツ用品店の売り場配置は概ね把握している。
光莉の後ろをついてくる瀧澤はキョロキョロと所在なさげに辺りを窺っていた。
「もしかして……スポーツ用品店に来るのも初めてですか?」
「ああ」
スポーツ用品店がウィンドウショッピングのコースに組み込まれている光莉とは対照的だ。