スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
(話したいことって何だろう……)
この関係を解消したい?もう飽きられてしまった?
仕事中にも関わらず、光莉の頭は瀧澤のことでいっぱいだった。
瀧澤が不在の今、最悪な予想の数々が頭を駆け巡る。
いつもならここら辺で遊佐に話しかけられ、気が紛れるのだが、遊佐も瀧澤に同行し上海へ渡ったため法人営業部はひっそりと静まり返っていた。
(ダメだ、ダメだ!こんなことだからありえないミスをするんじゃない!)
光莉は気合いを入れ直し、パソコン上の伝票と再び格闘し始めた。メラメラと燃えたぎった火は消えることなく、昼食ではいつもの野菜炒め定食を食べ切った上で、ご飯とお味噌汁をおかわりした。
これには柳瀬も大笑いだ。
(さすがに食べすぎたかも……)
光莉は食堂と同じフロアにあるお手洗いでゲフッと咳払いしていた。ブラウスに飛んでしまった野菜炒めの汁の染みをポンポンとハンカチで叩いていく。露希からもらったブラウスを汚すなんて。そそっかしいったらありゃしない。
「邪魔」
「あ、すみません……」
染み抜きをしていた光莉に冷たく言い放ったのは瀧澤の秘書である中野恭子だった。鏡の前を中野に譲ると、ふんっと鼻を鳴らされる。
「瀧澤専務にあんな迷惑かけておいて、なんで我が物顔で会社にいられるのかしら?」
中野はメイクを直しながら鏡に向かい独り言のように呟いていたが、誰に聞かせるつもりなのかは明らかだった。
お手洗いには中野の他に光莉しかいない。
かあっと、光莉の顔が屈辱で真っ赤に染まる。
「瀧澤専務って本当に悪趣味よね」
真っ赤なルージュを塗った中野の唇が醜く歪む。