スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~

「清純ぶっているくせに、やっていることは娼婦と同じじゃない。瀧澤専務と寝て、プロジェクトチームの一員になるなんて恥ずかしくないの?」

 光莉がプロジェクトチームの一員になったのは、本当にたまたまだ。瀧澤に贔屓されたわけではない。でも……。

(この人、知ってるんだ……)

 中野は瀧澤と光莉のただならぬ関係に勘づいていた。瀧澤のスケジュールを調整するのは彼女の仕事である。瀧澤の行動パターンから推察したのかもしれない。
 中野は汚らわしいものでも見るように眉を顰めながら言った。

「テニスしか能がないくせに出しゃばらないで。今度出しゃばったら、あんたが瀧澤専務の女だって会社中に言いふらしてやるわ!」

 中野は光莉をせせら笑うと、メイク直しを終えお手洗いから出て行った。
 何も言い返すことができなかった光莉は洗面台に手をついた。
 ……中野の言う通りだった。

 光莉にはテニス以外、何の取柄もない。
 中野のように優れた容姿や秘書のスキルがあるわけでもなく、遊佐のように海外で仕事をするようなバイタリティがあるわけでもない。仕事の面ではむしろ足を引っ張っているくらいだ。
 きゅっと心臓が冷えていく。
 二人の関係が明るみになれば、執行役員が一般社員に手を出したとして瀧澤の評判はガタ落ちになる。中野が勘違いしていたようにプロジェクトチームの人選に関しても懐疑的な意見が出てくるだろう。
 一緒にいたいとどれだけ望んでも、周りがそれを許してくれるとは限らない。

(これ以上、一緒にいるべきじゃない……)

 光莉は今後の身の振り方について大きな決断を下したのだった。


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