スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
上海出張から瀧澤が戻ってくると、光莉はその日のうちに呼び出された。
この日は休日だったので、アパートまで瀧澤に迎えに来てもらった。乗り慣れたセダンで向かったのは、ベイエリアにある夜景が一望できる公園だった。
瀧澤は光莉を散歩に誘った。
眼下に広がる夜景は、山小屋で眺めた星空を思わせた。
十一月の冷たい風が二人の間をすり抜けていく。瀧澤のジャケットが風にはためく。
「どうした?今日も随分と口数が少ないな」
「すみません」
「完成したサンライズホテルに寄ってきたよ。素晴らしかった。苦労しただけに感慨深いものがあったな」
「すみません」
「別に君を責めているわけではないからな」
……わかっている。瀧澤は恩着せがましい皮肉を言う人ではない。苦労した分だけ純粋に嬉しかったのだろう。
「ごめんなさい……!」
光莉は唇を噛み締めながら、声を震わせながら瀧澤に謝った。痛みで誤魔化していないと泣いてしまいそうだった。
「もう二人きりで会うのやめます。テニスの練習も付き合えません」
「どういうことだ?」
「本当にごめんなさい……!今までありがとうございましたっ……!」
光莉は一方的にお別れを言うと、瀧澤の目の前から逃げ出した。カップルが大勢いる公園から飛び出し、雑踏の中を駆け抜ける。